自律的に動くAIを入れる予定は7割、その動きを信頼できているのは3割

AIをめぐる話題は、この一年で移り変わってきました。「AIを入れるかどうか」から、「入れたAIに、どこまで任せられるか」へ。ここ数年で広まったのは、人が一つひとつ指示を出して使うAIでしたが、最近はそこに、目的だけを伝えると、あとは自分で段取りを組んで動くAIが加わり、業務の一部を任される場面が出てきました。自律型AI、あるいはAIエージェントと呼ばれるものです。メールの下書き、見積書の作成、問い合わせへの一次対応。人が確認する前に、AIが先に手を動かす場面が増えました。各社の調査を並べると、「AIを入れる」意思の広がりと、「AIに任せる」ことへの安心の間に、はっきりとした差が見えてきます。その差は、小さくありません。

AIを入れる予定は7割、AIを信頼できるのは3割

この差を、数字が示しています。各社の調査や報道によれば、2年以内に自律型AIを本格的に使う予定の企業は74%にのぼります(デロイトの2026年の調査)。一方、業務システムの連携を手がけるBoomiの調査では、自社のAIエージェントの動きを信頼していると答えた企業は34%にとどまりました。マッキンゼーの2026年の調査でも、AIの戦略づくりや統制、エージェントの制御まで含めて成熟していると言える企業は約30%です。AIを入れる方向はほぼ固まっているのに、安心してAIに任せられる状態には、まだ届いていません。AIを入れる順番が先に進み、任せる準備が追いついていないのです。

なぜ、これほど差が開くのでしょうか。自律型のAIは、人がいちいち確認しないことを前提に動きます。速く動く代わりに、AIが途中でどう判断したのかが見えにくくなります。もし相手が社外の取引先なら、AIの一つの間違いが、そのまま会社の信用の傷になります。だから、「AIを動かせること」と「AIに任せられること」は、別のことです。AIを入れる判断は、一度決めれば済みます。けれど、AIに任せる判断は違います。AIにどこまでやらせてよいか、どの場面で人の手に戻すか。これを一つずつ決めて、はじめて成り立ちます。7割と3割の差は、その決めごとがまだ済んでいない会社が多いことの表れとも読めます。

詰まっているのは現場より判断層

コーレ株式会社が、生成AIを導入している企業の管理職・マネージャー1,008名に、2026年に行った調査があります。「自分の職場で生成AIを使いこなせていないのは、どの層か」という問いに、いちばん多く挙がったのは課長・リーダー職で29.3%。次いで経営層が26.8%、一般職が25.6%と続きました。これは自律型AIに限らず、生成AI全般についての見方です。それでも、AIという道具が配られたあと、任せる側の判断をする層ほど使いこなせていない、という現場の実感がにじんでいます。意外に思えるかもしれません。

理由は、おそらく一つではありません。現場の担当者は、日々の仕事でAIを自分の手で使います。触っているうちに、AIにできることと、できないことの感覚がたまっていきます。一方、課長や役員といった判断層は、自分でAIを操作する場面が多くなく、部下から上がってきた結果を見て、良しあしを決める立場です。触る回数が少なければ、「ここまではAIに任せてよい」という勘所も育ちにくくなります。役員は「よく分からないから現場に任せる」と言い、現場は「決めるのは上の仕事だ」と待つ。その間で、AIの使いどころが宙に浮いてしまいます。

「AIを配る」と「AIを回す」は違う

ここまでの数字が示すのは、多くの会社がつまずくのは導入の入口ではなく、その先だということです。社員にAIのライセンスを配り、使い方を教える。ここまでは、多くの会社が進めています。問題は、その先です。止まってしまうのは、配ったあと、誰もそのAIを回していない、という一点です。自律型のAIを安心して任せるには、少なくとも三つの準備が要ります。

一つ目は、会社の判断基準を、AIにも分かる言葉に書き出すことです。値引きをどこまで認めるか、社外に出してよい情報はどこまでか、どんな相手なら取引を断るべきか。こうした基準が経営者や担当者の頭の中にあるだけでは、AIはそれに従えません。言葉にして、はじめて渡せます。二つ目は、AIの動きを人が見ていて、必要なときに止められるようにしておくことです。AIに任せる範囲をあらかじめ決め、その範囲を外れたら人の判断に戻す。この道筋を用意します。三つ目は、その仕組みを日々回す担当を、社内に決めておくことです。入れて終わりにせず、AIが出した結果を見て、基準を直し続ける人が要ります。どれも、AIの道具を買えば自動的に付いてくるものではありません。

見積づくりをAIに任せる、という例で考える

一つ目の「判断基準を言葉にする」を、見積づくりで考えてみます。むずかしい話ではありません。お客様から問い合わせが来る。まずAIが、過去の取引や在庫を見て、見積書の案をつくる。ここまでをAIに任せます。そのうえで、任せる判断の基準を先に決めておきます。AIが自分の判断で出してよい値引きは、定価の10%まで。それを超えるなら、AIに決めさせず、人が判断する。競合他社の名前が出ている案件は、送る前に営業担当が必ず目を通す。相手が初めての取引先なら、送信の手前でいったん止める。こうして線を引けば、AIは速く動きながら、危ない場面だけ人に戻ってきます。線を引かずに任せると、その速さが、そのまま間違いの起きる速さになります。「AIに任せられる状態」とは、この線が引けている状態のことです。特別な最新技術より先に、決めておくべきはここです。

年商10〜100億の会社への示唆

自律的に動くAIは、すべてを丸投げしてもうまくいきません。入れたまま放っておいても、うまくいきません。どちらも、途中を人が見ていないからです。要るのは、監督の仕組みです。経営者の判断基準をAIに翻訳する。AIの動きを人が見て、必要なら止める。当社は、この仕組みを「AI経営本部」と呼んでいます。そして、その仕組みを現場へ組み込み、日々回していける人材を「AI棟梁」として育てています。大手が、AIそのものより先に研修や体制づくりへ動くのも、この「AIに任せられる状態」を先に整えるためだと見えます。同じことを、自社の身の丈で用意できるか。派手な最新モデルを追いかける前に、そこを決めておく。今回の数字は、その順番を経営者に思い出させてくれます。

出典: Enterprise AI Adoption News(Lumenova AI・デロイト/Boomi/マッキンゼー各調査を集約)2026年最新「企業の生成AI利用実態調査」管理職1,008名(コーレ株式会社・commercepick)

MICOTOの取り組み

AI棟梁(社長の決めごとを、社内の手順に置きかえる役)。社員が自社の実データから、動くAIツールを1本つくり切る研修です。

AI経営本部。お金の流れ・営業・週次の経営会議を、AIエージェントの組織で回す仕組みです。

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